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音楽コラム第2回~P!nk の「What About Us」から感じる洋楽と邦楽(バンプ、flumpool)のパクリセンスの差

音楽・DTM

 

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最近車に乗っている時はラジオを聴くようにしている、自分の普段聴かない分野の音楽も聴くことが出来るし、情報収集ツールとしてラジオは以前として優秀なツールだと思う。

 

タイトルにあるP!nk の「What About Us」もラジオで聴いて興味を持った曲の一つである。

 

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P!nkの「What About Us」は洗練されたスマートなパクリ

 

曲調が自分好みだったのもあるが、すぐにこの曲はColdplay(コールドプレイ)の「A Sky Full Of Stars」が元ネタだとわかった。

(ちょっとブライアン・アダムスのBack To Youにも似てる。ひょっとしたらこの2曲をミックスするというコンセプトだったのかもしれない)

 

自分がこの曲に感銘を受けた理由は、この曲はコールドプレイの影響を感じさせつつも、盗作作品にありがちな「胡散臭さ」や「後ろめたさ」は感じなかったという事である。

 

実際この曲のコード進行を採譜してみるとFm→C♯m→G♯というコード進行で、コールドプレイの「A Sky Full Of Stars」とは違う。

似ているのはシンセリフのリズムとそのリフが曲の大半を占めるという曲構成だけだ。

メロディーラインはまったく違う。おそらくまったく違うアレンジなら、私はコールドプレイの影響は感じなかっただろう。

 

最初にメロディーなどの断片的なアイデアを元にして最終的に「コールドプレイ風に仕上げよう」という流れで創られたのか、「コールドプレイみたいな曲を書こう」という流れで作曲を始めたのかまでは私にはわからない。

前述した通り、この曲は2017年9月に発売されたアルバムの一曲であり、曲が完成に至るまでの工程は私にはわからないのだが、この楽曲の作曲クレジットには「Pink · Steve Mac · Johnny McDaid」の文字がある。

 

皆さんはご存知無いだろうが「Steve Mac · Johnny McDaid」は英米の音楽界を代表するソングライターであり、日本で言うと小室哲哉と筒美京平が共作しているようなものなのだ。サッカーで言うならメッシ・ロナウドの2TOPのようなものである。

 

最近の彼らが手掛けた曲で一番有名なのはエド・シーランの「Shape Of You」だろう。(彼らは他にもエド・シーランのアルバム曲をたくさん手掛けている。)

さすがにP!nkクラスのアーティストになるとチートレベルの作曲チームが用意できるのだなと感心しつつも、ここからは敢えて我が国、日本の音楽界のパクリに注目し、どれぐらいレベルの差があるか私なりに検証したい。

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邦楽のパクリはインスパイアではなく盗作色が強く、スマートさがない

 

わかりやすいようにコールドプレイの「A Sky Full Of Stars」を元ネタにした曲を探した。

意外とすぐに見つかってワロタ(この時点で洋楽と邦楽のレベルの差が明らかに…)

 

チョイスしたのはbump of chickenの「Butterfly」とflumpoolの「free your mind」の2曲だ。

 

まずこの2曲とコールドプレイの「A Sky Full Of Stars」を聴いてみていただきたい。

誰が聴いても影響を受けていると感じるハズだ。

 

 

 

具体的どこが似ているかを表にしてみた

 

結構適当ですが、ご容赦ください

※1 表の見方(〇似てない、△微妙、×似てる)

※2 ドロップというのはEDMには必ずと言っていいほど組み込まれるパートの名称であり、曲の一番盛り上がる部分の事を指す。バンプの曲で言うと4分30秒以降の部分。

※3 FX音とはバンプの曲で言うとイントロとかサビ頭で聴こえる「ドォーン」という太鼓みたいな音。

 

P!nk の「What About Us」

メロディーライン
曲構成×
ドロップ※2
コード進行
ピアノ〇(ピアノは使ってない。)
シンセリフ×(前述したBack To Youの方が似ているが、ここは×にさせてもらった)
シンセ音色
リズム△(C2018/07playは4つ打ちだが、P!nkは微妙に変化させているので△にした)
FX音※3〇(FX音は使ってない。)
アコギストローク△(クライマックスで使ってるが、使い方が違うので微妙)
エレキギター
衣装・演出

 

 

bump of chickenの「Butterfly」

メロディーライン△(基本似てないが、後半の裏声の部分は明らかに意識している)
曲構成△(構成自体は似てないが、アウトロは似てる)
ドロップ×
コード進行
ピアノ×
シンセリフ×
シンセ音色×(おなじsaw toothという音色)
リズム〇(まぁここはバンドメンバーに任せるから似るわけない)
FX音×(ほぼ同じ。ていうか選ぶ音素材がありきたり過ぎる。)
アコギ△(コールドプレイはストローク。バンプは単音のフレーズもあるから微妙)
エレキギター〇(似てるちゃっ似てるが、ギターバンドが大体U2のパクリだからまぁOK)
衣装・演出×(個人的にこれが一番ヤバイ。パクリというかモノマネレベルで似てる。)

 

flumpoolの「free your mind」

メロディーライン
曲構成△(構成は似てない。アウトロは酷似。同じコード進行で引っ張るのも酷似)
ドロップ〇(ドロップは無し)
コード進行
ピアノ×
シンセリフ×
シンセ音色×(おなじsaw toothという音色)
リズム〇(バンプと同じくここはバンドメンバーに任せるから似るわけない)
FX音〇(たぶん使ってない)
アコギストローク
エレキギター×(うーむ、似てる。参考にしたの丸わかり。)
衣装・演出〇(ていうか真似できるほど予算が無い)

 

 

×になった項目を抜き出してみると、

P!nkは

曲構成
シンセリフ

 

バンプは

ドロップ
ピアノ
シンセリフ
シンセ音色
FX音
衣装・演出

 

flumpoolは

ピアノ
シンセリフ
シンセ音色
エレキギター

 

と明らかに邦楽の方が該当する項目が多いという結果になった。

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邦楽2バンドの楽曲を聴いた私の感想

 

バンプは曲を最初に書き上げて、アレンジをコールドプレイから拝借したという印象。

逆にflumpoolはコールドプレイのような曲を書こうとして書いてる印象を受けた。

 

バンプはやはり楽曲のクオリティは一定の基準を超えている。これはスタジアムを満員にするバンドなら当然だろう。藤原基央はこの世代ではトップクラスのシンガーソングライターと言っていいだろう。だが最近の楽曲の「記念撮影」からも感じたが、彼はメロディメイカーとしてはまだまだ健在だが、アレンジャーとしては行き詰っているのではないだろうか?

 

「butterfly」も「記念撮影」も露骨にコールドプレイのアレンジをパクっている(記念撮影の元ネタは something just like thisという曲。ギターのアルペジオに関してはMr.BigのPromise Her The Moonとほぼ同じ)。こういう時にバンドのメンバーがアレンジに関しては手を貸すべきなのだろうが、ワンマンバンドのバンプではそれは難しいのかもしれない。

 

それにしてもバンプの衣装やライブ演出には驚いた。なぜネットですぐにパクリ検証されるこの時代に、こんなに堂々と恥ずかしげも無く他人のアイデアをパクれるのか、私には理解に苦しむ。いや影響を受けるのはいいが、それをそのまま人前で披露するのは如何なものか。

バンプは日本で有数のビッグバンドなのだから、自分達なりの解釈、自分達なりのアイデアを示して、後進のアーティスト達の良い見本になってもらいたいものだ。

 

flumpoolはやはりメロディラインが耳に残らない。厳しい言い方をすればこれは単に才能の限界だろう。なぜ彼らがアミューズという力のある事務所に所属しながらも、あまりメジャーになれないのかは理解できた。彼らのデビュー曲が外部の作曲家の曲だったことから、事務所的には彼らの作曲能力はあまり評価してないのではないか。

おそらくこのままでは彼らのキャリアはジリ貧だろう。心機一転して外部の作曲家の曲を演奏するイケメンバンドとしてやっていった方がいいのではないだろうか。(それはそれで難しいのだが)

 

ということでP!nkと比較しながら聴いていると、明らかに洋楽より邦楽の方がパクリ的な胡散臭さを感じた。次の項ではその感覚を言語的に説明したいと思う。

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決定的な違いは一曲に含まれる情報量と作者の音楽的ボキャブラリー

 

言葉で言い表すなら、P!nkの作品はコールドプレイからの影響を自分の音楽的ボキャブラリーに置き換えて、自分の「音楽フィルター」を通して影響を出しているが、邦楽にはそれが無い。

影響を受けるのは全然良いのだが、そのインスピレーションを「今まで自分が培って来た音楽的ルーツと融合させよう」という意気込みが感じられないのだ。

 

コールドプレイの影響をそのままコールドプレイ風の作品として発表しているのが、邦楽の胡散臭さの元凶なのだろう。結局それはインスパイアと盗作の差とも言える。

 

「じゃあどうすればいいのか?」という話になるのだが、これは音楽的ボキャブラリーを増やして、音楽に含まれる情報量を増やしていくしかないだろう。

 

例えばバンプはコールドプレイからEDM要素を拝借したいと思ったのだろうが、彼らの中ではEDM=コールドプレイという考えしかなかったのだろう。(そもそもこのEDM要素はコールドプレイではなくアレンジャーのAviciiによるものだが)ここで彼らがzeddでも何でもいいが、他のEDMアーティストの楽曲を研究して、それを自分の音楽として消化しきれていれば、全然違う結果になったと思うのだ。

 

音楽的ボキャブラリーというのは自分の引き出しに入っている物の中でやり繰りするしかないので、新しいジャンルを研究して引き出しに新しいアイデアを入れるか、それが無理なら専門のプロデューサを新しく雇った方がいいだろう(コールドプレイはこのやり方。彼らはこの曲のアレンジをAviciiに依頼。)。

音楽的ボキャブラリーが増えれば、自ずと音楽に含まれる情報量は増える。そうすれば製作過程でたくさんの選択肢を所持することができ、音楽がよりオリジナルで彩り豊かな作品になるのではないだろうか。

 

「シンセの音色はどれにしよう」「ドロップはどうしよう」「FX素材はどれを選ぼう」そういった製作過程に無数にある分岐点で「どれだけ自分のオリジナル色を出せるか」「どれだけ多くの選択肢を持てるか」という積み重ねのちょっとした差が、洋楽と邦楽の広大な差を生み出しているのではないだろうか?

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邦楽界の構造的問題

 

ただ邦楽チームにも情状酌量の余地はある。

 

前述したようにP!nkの作曲クレジットは「Pink · Steve Mac · Johnny McDaid」となっており、かなりチートな作曲陣である。三人いれば音楽的ボキャブラリーも3倍になるわけで、どう考えてもそっちの方が有利である。サッカーで例えるなら「マラドーナ、モドリッチ、ジダン、ベッケンバウアーが組む中盤と一人で勝負して勝てますか?」って話である。

 

飛ぶ鳥を落としすぎて骨折して来日ツアーが中止になったエド・シーランも外部ライターと作曲した曲がほとんどである。

ところがどっこい邦楽界ではなぜか単独で作曲する作曲家が多いし、そちらの方がカッコイイという風潮すらある。まぁノエル・ギャラガーのように外部ライターとの共作を評価してない人は英米の音楽界にもいるのだが、日本では批判すらないくらい、単独で作曲しているアーティストが多い。

 

楽曲コンペの締め切りまでの期間が短い日本の音楽界では、他人と悠長にコラボレーションしている暇がないという現状なので致し方ないのかもしれないが、一人に掛かる負担は確実に日本の作曲家の方が大きい。

これは「英米の音楽界の方が音楽的ボキャブラリーを日本の音楽界よりも重要視している」っていう事なのではないだろうか?

 

英米の音楽界は「音楽的ボキャブラリーの量=楽曲のクオリティ」という図式の元に楽曲制作を進めているのに対し、日本の音楽界の人間は「音楽的ボキャブラリーって何ソレ?美味いの?」状態である。


そう考えると邦楽が洋楽をどんなに真似ても追いつけないのは自明の理である。

斜陽産業の日本の音楽界が立ち直るにはもはや「洋楽並みにクオリティを劇的に上げる」という単純で激ムズな方法しか残されていないかもしれない。だがそれを業界全体がトライするような気風が生まれれば、邦楽界が盛り返して、ジャパンミュージックが世界を席巻するきっかけになるかもしれないのだ。


やらない手はない。


とりあえず自分も頑張ろう。
(笑)