勝てたよな…でもお疲れ。
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アカン立ち直られへん…。もったいないな~。絶対勝てたよ、この試合。ポーランド戦の記事で「ベスト16の中では比較的やり易い相手」と書いた通り、試合自体は接戦だったと思う。
マスコミは「ロストフ・ナ・ドヌの悲劇」、「世界の壁に跳ね返された」と大仰な表現をするのだろうが、CL3連覇のレアルマドリードだって今シーズンのビジャレアル戦で似たような形で敗戦している。しかも本拠地のサンティアゴ・ベルナベウで。まぁマドリーの場合はジダンが無能なのもあるが、あんまり「世界との差」という言葉で自らコンプレックスを抱える必要は無いと思う。
これが日本のスタメン。まぁいつも通り。
ベルギーもいつも通り。コンパニが復帰。私が「ベルギーはやり易い」と書いた理由の一つとして、彼らが「一人でもビッグネームを多く同時にピッチに立たせる」という実務的ではないファンタジー要素を追い求めている点にある。カラスコの左ウイングバック起用はその最たるものであり、原口のゴールはそのスペースから生まれた。まぁ簡単に言うと凡庸なチームで言う程強くなかった。日本代表はベスト8に行く千載一遇のチャンスだった..。
日本代表は何を間違ったのか?
2-0までは理想的な展開だった。それは間違いない。
まず最初の失点。あのフェルトンゲンのお笑いマグレヘディングゴールである。あれはまぁ戦犯探しみたいになるのは嫌なのだが、川島がその前の時点で「何とか出来なかったかな~」と思ってしまう。CKからのシャドリのフンワリとした折り返しをもっとちゃんと処理できていれば…。乾がちゃんと相手ゴール方向にクリア出来なかったのも痛い。フェルトンゲンのシュートも「あんなにニアに立つ必要あったかな?」と思ったりもする。
2点目のフェライニのゴールに関しては、アザールが左足でクロスを挙げているのに川島のポジショニングがややニア寄りなのが気になるが、まぁノーチャンスだろう。世界のトップレベルのキーパーなら止めれるかもしれない。だがそれを求めるのは酷な話だ。
セネガル戦の直前の記事で「吉田をボランチで起用して植田をCB置く」布陣を紹介したが、高さを補填する采配するという選択肢もあったのかもしれない。実際柴崎の代わりに入った山口は何の役にも立っていなかった。山口を入れるという事は能動的なフットボールを手放すと同意であり、それなら植田を入れた方が、確かなベルギー対策になったのではないだろうか?
試す時間が無かったので仕方ないが、ガーナ戦で試した3バックが「吉田、槙野、長谷部」ではなく「吉田、昌子、植田」だったら何か違ったのかもしれない。
ベスト8の夢が砕け散ったベルギー戦3失点目の原因は?
そして巷で盛んに議論されているベルギーの3点目。
状況を整理すると、本田のスーペルなFKをクルトワがファインセーブした事によって得たCKから始まっている。
日本はこの時守備に3人残していた。という事で日本が「試合を決めに来てた」という意図は汲み取れる。それについては後述するので置いておこう。だが個人的に気になったのはCKを蹴ったのが左利きの本田であったという事である。
振り返ってみればコロンビア戦の大迫のゴールも、同じサイドの本田のCKからであった。確認してもらえばわかるが、本田のボールの軌道とポイントがコロンビア戦と酷似しているのがわかる。
ここからは推測だがクルトワをはじめとするベルギーの選手達にこのプレーは研究されていた可能性がある。
左利きの本田がカーブかけて蹴れば、当然ボールが直接ゴール方向に飛んでくることは無い。故にクルトワは迷い無く飛び出して処理する事が出来た。
カニサレスがクルトワのこのCK時のキャッチを賞賛していたが、クルトワがあの場面で本田のCKをキャッチを出来たという事実が、コロンビアのGKであるオスピナより遥かに上のランクのGKだという事を証明している。
そしてここからベルギーのカウンターが始まっている。日本は前述した通り3人だけ。ベルギーは5人がスプリントでカウンターに参加している。山口蛍の対応が批判を集めているようだが、たしかにマケレレとかのレベルなら、デブライネからムニエへのパスコースを切りながら、デブライネを潰しに行くという決断を下す事が出来たのかもしれない。だが我々は日本代表について話しているのである。マケレレのようなレベルの選手はいないのだ。
なので日本の「身の丈にあった対処」を考えれば、
①ベルギーより速い切り替えでスプリントして戻る
②4人以上守備役を残す
③CKをキャッチされないように工夫をする
④クルトワのスローイングをケアする役を用意
ぐらいしかないのではないだろうか。
「壁」は世界ではなく自分達の中にあった
なぜこれらの対策を実行する事が出来なかったのだろうか?世界での経験?いやここにいた選手達の多くはトップレベルの試合を経験している猛者達だ。私の意見だが日本代表の選手はどこかで「ベルギーを過小評価」していたのではないだろうか?
上の写真はベルギーの1点目のCK。ベルギーはCKを川島が前に出れない絶妙なコースに蹴っている。つまりベルギーは日本のカウンターを受けるリスクを最小限にするという意図があったのがわかる。
つまりベルギー代表は前半は日本のことを舐めていたかもしれないが、後半は「日本を過小評価」していなかった事がわかる。
そう考えると、大会前に「日本人は相手を美化しすぎ」と強気のコメントをした本田のCKが最後のプレーとなってしまったのは運命的なモノを感じてしまう。本田はどこかでベルギーの力を低く見積もったのかもしれない…。
日本代表のW杯での立ち位置は「持つ者」か「持たざる者」で言うなら間違いなく後者である。なので攻撃時には相手の 「守備力」と「カウンターの威力」、そして自分達の「攻撃力」を天秤にかけて、攻撃と守備に掛ける絶妙なバランスを見極める必要がある。守備時でも同じである。相手の「攻撃力」と自分達の「守備力」のバランスを見極める必要があったのではないだろうか。
だがこのシーンではそのバランスが崩壊していた。日本代表の「守備力」とベルギー代表の「攻撃力」が吊り合っていなかった。それがこのシーンを生んだのでは?と思っている。それは個のクオリティの問題ではない。
思えば日本はベルギーよりも、よりチャレンジャー気質でこの試合の臨んでいた。その証拠に「自分達は失うものがない」と長友は試合前に語っていた。私は「グループリーグすら突破できない」と批判を浴びながら、命がらがらグループリーグを抜けた日本代表の道のりが、「失うものがない」という日本の立ち位置を生み出し、「絶対に負けてはいけない」という立ち位置のベルギーとの間で、精神面での差を生んだと思っている。
仮にベルギー側が終了間際にCKの場面に出くわしていたら、ベルギーは日本ほど攻撃に傾いていなかっただろう。彼らはあの3点目のシーンもカウンターに5人使っているが、半分は守備に残している。なぜなら彼らは「ベスト16で日本代表に負ける事は許されない」からだ。
つまり日本とベルギーの差は「守るべきもの・失うもの」があるかないか、これだけである。
そしてそれは言うまでも無く、マスコミが多用する「世界の壁」などではない。「世界の壁」など存在しなかった。
予選で敗退したイタリアやオランダ、グループリーグで敗退したドイツ、日本と同じベスト16で敗退したスペインやポルトガルが敗因を「世界の壁」と表現するだろうか?日本人は日本代表がW杯で優勝するまで敗因を「世界の壁」と表現しつづけるのだろうか?壁があったとしたら壁は日本代表自身の中にあったのだ。しかもその壁を創り出したのは日本代表自身とそれを取り巻く環境であった。
たしかにベルギーの選手達の方が日本の選手よりも強くて・速くて・上手いのかもしれない、だが自分達自身で「壁」を創り出している間は、仮に彼らと同レベルになっても勝つことは出来ないのではないだろうか?
「来たるべき時=W杯決勝トーナメントで勝利する時」のためにメンタル面での準備はしておくべきだと、今回の戦いで私は痛感した。
「ダイの大冒険」のロンベルクが剣を抜けないダイに言った名言
剣を抜けない原因はただひとつ…相手を見切れないおまえの未熟さにある!おまえの心の中にあるのだ!!オレはそれを鍛えたかった…
ロシア大会の日本代表を総括。カタールW杯で雪辱を。
この試合を観ていて、ジーコが「岡田武史とレジェンドたちが斬るFIFAワールドカップ」という番組で日本の選手について「失点した途端ピッチで右往左往することがあった」と語っていた事を思い出だした。たしかに結果を見れば「ほら見たことか」となるのかもしれないが、私はそこまで選手がパニックに陥っていたようには見えなかった。
「2-0になった時点でどうすべきだったか?」と言われているが、明確な答えは無い。ロングボール対策をすべきだったかもしれないし、3点目を狙うべきだったかもしれないし、ポゼッションで時間を稼ぐべきだったのかもしれない。ただ選手がパニクっているようには見えなかった。だが拠り所にする明確なプランは無かった。
単純に西野監督が就任してから2ヶ月という事で、チームとしての研鑽が足りなかったのかもしれない。ベルギーには選手の変更だけで、ロングボール主体のサッカーに切り替えられる懐の広さがあった。日本のロングボールに対する脆弱性は恒久的な問題であり、日本代表はこの問題を解決するプランを用意できなかった。
交代策も本田以外に期待できる選手はベンチにいなかった。これらを「世界との差」と解釈とするのは無理がある。4年あればW杯に参加するレベルの国なら準備は可能だったはずだ。
日本代表のベスト16進出という成績は、2ヶ月前の監督解任が良くも悪くも影響している。ハリルホジッチだったらグループリーグ敗退だったのかもしれないし、ベスト8進出だったかもしれない。ハリル解任・西野招聘が正解だったかどうかは誰にもわからない。
だがチーム強化という観点で見れば、監督を2回交代して、日本代表チームに手札を増やせなかったという時点で失敗である。
選手のクオリティは成長している。だが選手を支えるべき日本サッカー協会も今回の一連の騒動から学んで成長しなければ、日本代表はカタールW杯で苦杯を舐める事になるだろう。
グループリーグ敗退とグループリーグ突破を交互に繰り返している日本代表。ジンクス通りなら、次はグループリーグ敗退となる。何としてでもこのジンクスを打ち破ってもらいたいものだ。もしこのジンクスがカタールでも続くなら、「グループリーグを突破すればオールOK」という日本サッカー協会の体質に問題があると言われても仕方がない。
選手評
川島 前述した通り、失点シーンの対応は疑問が残る。結果的にほとんどの失点に絡んでいるので批判は避けられないだろう。
酒井 攻守両面で完璧なプレーを見せた。カタールW杯も出来れば頑張ってもらいたいが..。
長友 前半の自分のマークを捨てて、ルカクのシュートをブロックしたシーンは鳥肌モノ。本当よく頑張ったよ。
昌子 本人は「足を引っ張ったかも」的な事を言っていたようだが、そんなこと全くなかった、最高だったよ。パスが上手くないという前評判もあったが、冴えのある縦パスを連発。だがJリーガーで使えたのが彼だけというのが、日本の問題を如実に表している。
吉田 個人的にMOM。ルカクに仕事をさせなかった。
長谷部 いつも通り的確なポジショニングでチームをサポートした。お疲れ様。
柴崎 ちょっと疲れていたが、原口のゴールをアシスト。カタールでは主軸となる選手だろう。
香川 乾のゴールをアシスト。絶妙なポジショニングでヴィツェルとデブライネにとって問題となる存在であり続けた。
原口 見事なゴール。今大会で守備強度を保てたのは彼の献身性も関係している。
乾 スーパーミドルをブチ込む。今大会で日本代表が世界で戦うために求められるサイドハーフの基準を作ったと言える。
大迫 コンパニが凡庸に見えるぐらい良いプレー披露。まぁ私は元々コンパニの事は評価してないんだが(笑)だが彼の代わりとなれる選手は現状いない。カタールはどうなることやら。
本田 最後のFKヤバすぎワロタ。CKは若干「やっちまったな感」があるが(笑)見せ場をしっかり作った。お疲れ様。叩いてた奴は無能。本田は良い選手だよ。
山口 最後の失点で批判されているが、それが出来るならハノーファーを半年でクビなってないわな(笑)
西野 過去の記事の繰り返しになってしまうが、メンバー選考ミスが痛かった。宇佐美・遠藤・槙野・山口は選ぶべきではなかった。交代策の不振もメンバー選考ミスが起因となっている。だが誰も受けたがらない状況で仕事を引き受けて、最適解を見つけ出し、グループリーグを突破した。それは偉業だ。お疲れ様でした。